「群像の祭壇」レビュー

あらすじ

人口の半分が死滅した後、深刻な食糧難に直面していた世界で、祭壇と呼ばれる謎の存在が現れる。祭壇は、食糧と引き換えに犠牲者を要求するが、その相手を選別する方法は不明だった。主人公の少年・五十嵐は、妹との生活を守るため祭壇の献上品として選ばれ、自分自身を犠牲にすることを決意する。しかし、そこで目覚めたのは、祭壇と共に暮らす集団のメンバーだった。

感想

本作は、現代社会が抱える問題を描いたSF小説だ。食糧問題、人口爆発、社会システムの崩壊、対人関係の難しさといったテーマを複合的に描き出している。さらに、祭壇を中心に進むストーリーは、読者の興味を引き付けること必至だ。

とりわけ、本作で印象的なのは、登場人物それぞれが個性的かつ鮮やかだという点だろう。主人公・五十嵐は、妹を守るという使命感に捉われながらも、次第に祭壇と共に生きることになる集団の中で自分自身を見つけていく。その他の登場人物たちは、それぞれに過去を持ち、祭壇との関係をもつことで新しい人間性を発見する。

全体的に、作者の筆力が光る本作は、SF小説好きにはおすすめできる一冊だ。ただ、祭壇自身の正体や物語の本当の意味が明かされるのは後半になってからである。そのため、最初は少しわかりにくいかもしれないが、徐々に物語の全貌が明らかになっていくので、辛抱強く読み進めることをおすすめしたい。

※本書は、刊行当時の告知文に基づいて書かれています。


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