はじめに
松岡國男の小説『怒り』は、1960年代に発表されて以来、一度は人気を落としながらも、近年再評価され、多くの人々に読まれるようになった作品である。私もそのひとりであり、今回はその魅力について詳しく語りたいと思う。
あらすじ
『怒り』は、1949年に起こった「中野騒動」と呼ばれる事件をもとにした小説である。主人公の高橋は、戦争から帰還し、友人たちとともに居酒屋を経営していたが、やがて借金と酒に溺れ、彼の妻と娘を殺害する。そして、彼の犯行を知った近隣の住民らによってリンチされ、最後は警察に逮捕されるという展開だ。
登場人物
高橋：主人公。戦争で負傷し、身体を壊して帰還する。徐々に借金や酒に溺れ、妻と娘を殺害する。
高橋の妻：名前は不明。夫の借金や浪費に辟易し、別居する。
高橋の娘：名前は不明。父親に愛されたが、彼女も父親の借金のカタに殺害される。
松幸平：隣人で、高橋とは幼なじみ。高橋に対して思いやりを持ち、事件後にリンチされる。
感想
『怒り』は、物語の終盤において、高橋を取り巻く描写から、村全体が集団的教祖主義に陥り、思考力を失っていく様が描かれている。この描写が、戦後の日本を象徴しているとも言われている。また、登場する人物たちの内面に迫る描写も優れており、特に高橋の複雑な心理描写には、読者を惹きつける魅力があると思う。
まとめ
『怒り』は、日本文学史上、重要な作品のひとつである。過去の事件を小説化したものでありながら、そこから現代社会を映し出そうとする、強い社会派小説の要素を持っている。また、作中に登場する人物たちの見事な内面描写から、心理小説としても楽しめる一冊である。ぜひ、一読してみることをおすすめする。
参考文献：松岡國男 『怒り』、新潮文庫、2008年
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