『果てしなき流れ』レビュー

概要

『果てしなき流れ』は、日本の小説家・三浦しをんによる長編小説である。徳間書店から2014年に出版された。同じ作者の代表作である「舟を編む」とは異なり、現代の東京を舞台に、主人公・小林史彦の半生を描いた作品である。2015年には第68回読売文学賞を受賞した。

小林史彦は、家庭環境に恵まれず、反抗的な若者として育つ。しかし、ある大学教授に出会い、史彦の人生が大きく変わっていく。彼は教授とともに、河川の自然を研究し、自分自身を見つめ直すことになる。

その後、史彦はその教授の娘・順子と結婚し、二人の娘をもうける。しかし、彼の過去が彼を追い続け、妻との関係にも亀裂が生じていく。

三浦しをんの作品は、深い人間関係や自然の描写が魅力的であるが、『果てしなき流れ』では特に、主人公である史彦の内面に焦点が当てられている点が印象的だった。彼が若者としての反抗心を抱き、教授と出会い自己を見つめ直す姿勢が、誰にでも共感しやすいものだった。

また、自然描写にも繊細かつ緻密な描写があり、著者の繊細な感性が際立っていた。東京という都市にある河川である荒川をスケッチする場面は特に印象的だった。

しかし、史彦と順子の夫婦関係を描く箇所では、やや脇道にそれすぎてしまう印象もあった。全体としては、自然と人間の壮大なつながりを描いた素晴らしい作品であると感じた。

『果てしなき流れ』は、深い人間関係と自然描写を軸にした作品であり、主人公の内面が緻密に描かれている。自然のスケッチや、自分自身と向き合う史彦の心情描写は特に印象的だった。妻との関係にやや脇道が進んでいる箇所もあるが、全体としては素晴らしい作品である。