『蟹工船』のレビュー

あらすじ

『蟹工船』は、小説家・志賀直哉による代表作の一つで、1933年に発表された作品です。舞台は中国の契約労働者(蟹工船)を乗せた船で、冒頭部分では、中国の山東省からやってきた蟹(カニ)を空き缶に入れて、人力で搬出する過酷なシーンが描かれます。

主人公の一人である島田主計は、被雇用者たちを統括する職務を担い、労働や土木工事の指揮を取ることが多く、彼らを守ろうとします。しかし、雇用主や船長からの虐待や差別を受け、健康面でも日々苦しめられながら、助け合って生きていく姿を描いたハードボイルド小説です。

評価

『蟹工船』は、作者・志賀直哉が中国に滞在していた当時の実感をもとにして執筆された小説で、彼が体験した過酷な労働環境や中国人労働者たちの生の声が反映されています。

今見ると、20世紀初頭に当たるこの時代に、日本の思想家たちが中国を「東洋の中国観」の中で支配的なイメージ・概念をもって見下していただけでなく、実際の中国人労働者たちにとって非常に過酷な待遇を強いることが、改めて浮かび上がってきます。

物語の展開も、労働者たちが互いの命を救うため、また船内で暮らす違う人たちとの交流を通じて、自分たちの希望や人間的な尊厳を取り戻すまでを描いているため、途中の暴力的な場面があるものの、希望に満ちたエンディングに繋がるという内容となっています。

まとめ

本書は中国人労働者が抱える悲惨な状況を描いた小説で、作者・志賀直哉自身が自ら体験したことが元になっています。過酷な環境で生きる労働者たちの姿や、その背景にある人生や思想家たちの非常識さ、彼ら自身が持っていた想いを通じ、世界で恒久的なテーマとなっている「人間の尊厳」を問い直す作品となっています。


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