『羊と鋼の森』のレビュー

概要

『羊と鋼の森』は、宮下奈都さんによる小説作品です。日本の田舎で育った主人公・牧野つくしは、ピアノ調律技師の父親から音楽の才能を受け継いでいますが、音楽家に憧れる彼女は、ある日ピアノ製作者の専門学校へ進学することを決意します。そこで彼女は、ピアノ製作の一端に触れ、鋼琴技師・伊原摩耶花や、金属加工家・唐澤寿明と出会い、自分自身の音楽家としての運命を見つけ、成長していく物語です。

レビュー

宮下奈都さんの描写は本当に素晴らしいと思います。物語の中心となる音楽に関する描写は、非常に詳細かつ的確で、ピアノの響き、鋼琴の造形、音色など、全てがリアルに描かれており、読者はCDを聴いているかのような感覚になります。牧野つくしが鋼琴技師・伊原摩耶花や金属加工家・唐澤寿明と出会った後の彼女の成長過程も、細かく描かれており、彼女が音楽家としての自覚を持ち、成長していく過程で、感情移入せずにはいられませんでした。

また、この小説は音楽を扱っているのに、音以上に、人間の群像劇的な要素が強く、登場人物全員が、それぞれの人生と人間関係を模索している様子が描かれています。それぞれのキャラクターには個性的な魅力があり、牧野つくしの家族やクラスメイト、職場の同僚まで、全員が物語を支える大きな役割を果たしています。

まとめ

『羊と鋼の森』は、音楽をモチーフにした物語ですが、音楽以外のテーマも多数含まれた、人間ドラマ満載の作品と言えます。細かな描写により、物語に入り込むことができ、心動かされるシーンも多かったです。小説としても音楽としても、質の高い一作だと私は感じました。

レビューをお読みいただきありがとうございました。