『キッチン』のレビュー

あらすじ

1988年に発表された吉本ばななのデビュー小説『キッチン』。主人公の杏子は、母親を亡くし、父親とは疎遠になり、ある男性と同棲することになる。彼女は唯一生きがいと感じることである料理に熱中し、その人生観を語る。

感想

この小説は、非常に繊細できめ細やかな文体が印象的だ。特に、杏子が料理にこだわり、それを通して自分自身の生き方を模索する姿勢が描かれている点は素晴らしい。また、思いがけず出会った同性愛者の太陽との出会いと別れも、杏子の内面の成長が感じられる描写だ。

ただ、物語全体を通して暗さが漂っており、読み終わった後に重たい気持ちになることもある。また、設定としては1988年という年代背景があるが、若干古臭さも感じる。それでも、吉本ばななの独特な感性と文体が魅力的な作品であることは間違いないだろう。

まとめ

『キッチン』は、人生哲学、料理、個人と社会とのかかわりなど、深いテーマが詰まった小説である。吉本ばななという作家の才能が全編に滲み出ており、味わい深い一冊となっている。