「文学者の憂鬱」レビュー

あらすじ

本作は、マートン・デヴォールという文学者が、自分の生きるべき理由を見つけようと奮闘する物語。彼は自分の周りの人々や、文学作品の中から答えを探し、想像と現実の間で揺れ動く。

感想

本作は、人生や文学について考えさせられる作品であった。文字数が多く、一気に読み進めることは難しいが、それでもあきらめずに読み進めることで、深い思考に陥り、自分自身の人生について考えることができた。

主人公のデヴォールは、自分が書いた小説を素敵な女性に見せ、その反応を期待するシーンが印象的であった。自分の才能を認めてもらえることが、嬉しいと同時に、一方的に自分の作品を誉められるだけでは、自分自身が成長することはなく、やがて行き詰まってしまうことを表現しているようにも感じた。

また、物語の中で登場する小説や詩は、思わず引用したくなるほど美しく、心に残ったものが多かった。これらの作品が、現実と想像を行き来するデヴォールの心の中にあるものと重なるように描かれており、一層作品の世界に没頭することができた。

総じて、本作は大変素晴らしい作品である。読者自身が、主人公のデヴォールと同じように、自分が生きるべき理由や、目指すべき方向性について考えるきっかけを与えてくれるだけでなく、美しい言葉や物語をたくさん届けてくれる一冊である。

「文学者の憂鬱」（ウンベルト・エーコ　著）