概要
本書は、遠藤周作の代表的な夜行小説群(「沈黙」「人間失格」「日本橋」など)を批評的に分析し、その作品がどのような社会的・文学的脈絡の中で生まれたのかを探求する研究書である。
詳細
まず、本書は遠藤周作の創作背景を掘り下げることで、夜行小説が「前衛芸術」として社会に受け入れられるまでの流れを明らかにする。遠藤は、生まれ育った戦後において、若者たちが当時の「正義」に疑問を抱き、自分たちの価値観を確立しようとする過程を垣間見た。そこから彼は、社会の暗部を描き出す「夜行小説」を執筆することで、自己表現を試みた。
本書では、夜行小説の典型的な特徴がどのようにして生み出されたか、作品の構造や文体がどのように役割を果たしているか、具体的な例を挙げて詳細に解説している。また、作者の生涯や社会背景、作品受容の変革にも触れながら、夜行小説が日本文学に与えた影響や、現代社会での再評価の理由を考察している。
感想
遠藤周作の小説が大好きな私にとって、本書は非常に興味深いものであった。特に、夜行小説が新しい文学的表現形式として確立される過程や、作品が当時の社会の反応をどのように受けたかについての解説は、新たな視点を与えてくれた。また、実際に文学研究者として遠藤の作品を分析することで、より深く作品に入り込むことができた。
ただし、本書はある程度学術的な内容も含まれるため、一般の読者にとっては少し難しいかもしれない。しかし、遠藤の小説に興味がある方には、ぜひ読んでほしい一冊だと思う。
参考文献:「振り返れば、奴らがいた:遠藤周作の70年代夜行小説」(著:渡辺智恵子、出版社:筑摩書房)
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