あらすじ
『沈黙』は、キリシタン禁令が敷かれた17世紀の日本を舞台に、ポルトガル人宣教師のセバスチャン・ロドリゲスが、信仰を守り抜くために繰り広げる内省的な物語です。彼は、禁制品を匿った罪で捕まった師匠クリストヴァン・フェレイラを救うため、秘密裏に日本に潜入します。しかし、現地でキリシタン弾圧の猛威に直面した彼は、信仰と自らの生命を賭けた苦闘を続けます。
感想
本書は、キリスト教の信仰の在り方や日本文化との接点、そして信念を貫くことの難しさを描いた作品であると思います。主人公ロドリゲスが、苦難を乗り越える過程で、自らの認識を深め、信仰の在り方を模索していく姿が、読んでいる側にも深い感銘を与えます。
また、日本文化とキリスト教との相克というテーマにも注目したいと思います。中世ヨーロッパの多神教文化から派生したキリスト教は、当時の日本を含めた多くの地域で異端視されていました。それは、日本の文化や哲学がキリスト教とは異なる考え方をしていたからです。本書では、その相克が表現され、読者に問いかけを与えます。
総合的に見て、『沈黙』は、キリスト教精神や日本文化を深く掘り下げた作品であり、作品としての面白さと内容の充実度を兼ね備えていると言えます。是非、読んでみることをお勧めします。
※本書は、原作の著者である遠藤周作氏が没された後に、『Silence』というタイトルで映画化もされています。
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