『キッチン』レビュー

概要

『キッチン』は、日本の小説家である吉本ばななによる、1987年に発表された小説です。主人公である不思議な少女・茜と、彼女が出会う人々との交流を通じ、愛と別れ、そして生と死と向き合う物語が描かれています。

物語は、孤独な少女である茜が、母親を亡くしたことをきっかけに、叔母のもとで生活するようになったところから始まります。茜は、寂しさを紛らわすために音楽を聴いたり、料理をすることに夢中になっていました。

しかし、叔母の再婚を機に、突然引っ越すことになります。新しい家には、家族や友達がいなく、ますます孤独を感じてしまいます。そんな中、彼女は同じ境遇の少年・寺田と出会い、お互いの孤独を埋めるように友情が芽生えます。

そんな中、茜の周りでは次々と人々が去っていきます。茜は、友人の死や恋人の別れなど、多くの出来事を通じて、人生の短さと貴重さを学んでいくことになります。

『キッチン』は、茜の内面や周りの人々の繊細な表現が凝縮された1冊です。茜が語る孤独や失恋、そして死と向き合う姿勢に、共感を覚えました。

また、自然や音楽、料理や写真など、小説の中に登場する要素も非常に豊富で、細部に渡り吉本ばななの世界観が表現されていました。

ただ、物語の展開がある種の予定調和的な感じがしたため、ちょっとした驚きや衝撃が欲しかったかもしれません。

『キッチン』は、茜という少女の孤独と死を題材とする、吉本ばななが描く独自の美学を堪能できる小説です。少し予定調和的な展開があるものの、細部に渡る描写が魅力的で、何度も読み返したくなる作品だと思います。