概要
『君たちはどう生きるか』は、聖徳太子やナポレオンなどの伝記作品を多く手がけた作家、吉野源三郎による一般向けの自己啓発書です。自分自身が社会を担う一員として、どのような生き方をしていくのが望ましいのか、という問いかけを軸に、日本や世界の歴史的人物の生き方を引用しつつ、読者にそのヒントを与えます。
内容
まず、本書には「君たちはどう生きるか」という問いが中心に据えられています。そして吉野流による「三つの質問」と呼ばれる質問形式が提示され、自分が人として成長する上で必要な要素(自由・正義・愛)を考えます。その後、日本や世界の歴史上の人物や古典文学から、自由・正義・愛を体現した人物の例が引用され、その人物たちから学ぶ生き方が提案されています。
また、本書は読者自身が深く考え、自己分析していくことを求められます。自己啓発書でありがちな「正解はこれ!」といった方向性を提示しながらも、読者が自分自身を見つめることを妨げないように配慮されている点が好印象です。
評価
本書は「君たちはどう生きるか」という根本的で年齢や社会背景を超えた問いかけに対して、歴史的な人物や古典文学から多角的に答えを提示する点で素晴らしいと思います。また、自己啓発書らしい、良くないとされる部分に対する批判の積極性も高く、一味違った読書体験を提供してくれます。
ただし、「三つの質問」という問いかけがあるにも関わらず、本書内にそこから導き出される答えが、読者によって解釈の幅があるだけに、弱いと感じました。己の人生と向き合って、根本問いに答えるための一つの導きが欲しいという読者には物足りないかもしれません。
まとめ
『君たちはどう生きるか』は、大切な問いかけに対して多角的に答えを提示することで、読者自身が納得する、自分自身を見つめながら進んでいくことを目的とした自己啓発書です。根本的な問いかけには大きな力がある反面、個人的な要素が強いため、一概にお勧めの本とは言えません。しかし、根本的な問いかけに対して真剣に取り組んでいる人にとって、刺激的な読書体験を提供してくれるでしょう。
参照元:『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎、1984年、中央公論社)
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