書籍概要
『航路』は、文藝春秋の2021年6月号の特集小説である。全13話からなり、国際貿易を舞台に、時代を超えた人々の物語が描かれる。各話は、19世紀の中国、20世紀初頭の朝鮮、20世紀半ばの日本といった、異なる国や時代を舞台にしている。
レビュー
『航路』は、国際貿易をテーマにした13の短編小説集である。各話は、中国や朝鮮、日本といった東アジアの国々を舞台に、様々な人物、場面、時代を描いている。航海士、商人、皇族、刑事、伝道師、芸者など、多彩な登場人物たちが、それぞれの立場や志向をもって、航路に乗り出していく。
全13話という長編小説集だが、物語の長さはバラバラである。一話あたりのページ数も異なっており、読みごたえはまちまちだ。しかしそれもまた、各話の個性を引き出す効果があるといえる。19世紀の中国では、貞観の治という時代背景のもと、老船頭・新人商人の友情が描かれる。20世紀半ばの日本では、神風特攻隊が殉職するエピソードや、浮気に取り憑かれた主人公の幻想世界が描かれる。
文章は全体的に読みやすく、物語に引き込まれやすい。しかし、小説らしさが感じられない話もある。例えば、鎖国時代の日本で、オランダ人商人と女傑が奮闘する物語は、退屈な印象が残った。また、最終話に登場するキャラクターの設定に、無理やり感がある。
全体的に、『航路』は国際貿易を通じて、様々な人物が出会い、人生を紡いでいくドラマを描いた小説集である。物語には、時代背景や登場人物のバックグラウンドが工夫されているが、巻末の解説を読むと、それが理解しやすくなる。多様なストーリー展開と読みやすい文章は、ファンタジーやSFといったジャンルにも通じる魅力がある。航海に出たい人も、そうでない人も一度読んでみるとよいだろう。
まとめ
『航路』は、国際貿易をテーマに、東アジアの様々な時代を舞台にした13の短編小説集である。各話は登場人物や時代背景が異なり、読みごたえはまちまちだが、全体的に読みやすく、多彩なストーリー展開がある。最近小説に手を出していない人も、一度手にとってみるとよいだろう。
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