『火花』のレビュー

あらすじ

主人公の「森山未来(もりやま・みく)」は、自己中心的で理不尽な上司「鬼塚(おにづか)」との軋轢(あつれき)で多大なストレスを抱えるOL。ある日、投げたつもりの紙が鬼塚の頭に命中し、鬼塚が倒れてしまう。この落ち込みながらも鬼塚を不適切な態度で指導するさまが同僚たちによって目撃されており、森山は組織の理不尽なあり方について改めて考えさせられる。

感想

社会問題を描くことに慣れている作者、又吉直樹氏が描く初のフィクション作品。主人公・森山未来は一見、鬼塚の態度に嫌気が差した普通のサラリーマンのイメージがあるが、実は過去にはオリンピックアスリートを目指していたというキャリアを持ち、自分らしさを失いつつある状況に対して葛藤する様子が巧みに描かれている。

また、作者が得意とする大衆文化に触れる部分もある。森山が『BUMP OF CHICKEN』の歌詞に励まされたり、マンガ「ONE PIECE」の話をする場面など。これらは、主人公と同年代の読者にとっては「なるほど、共感できるな」と思わせるものである。

社会問題がテーマの作品にありがちな、単調で暗い物語にはなっていないのも見どころのひとつ。終盤には、森山が鬼塚と対話するシーンが印象的だった。

まとめ

主人公の葛藤や周囲の人間関係、意外な展開に加え、大衆文化に触れる部分もある本作は、社会問題を描く作品としてだけではなく、一般の読者にも楽しめる小説となっている。


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