『東京タワー』

概要

作家の吉田修一さんが2001年に発表した小説『東京タワー』は、社会現象を巻き起こしたベストセラー小説であり、2007年には伊藤穣一監督によって映画化もされました。本書は、家族という微妙な関係性を描いた物語であり、繊細な心理描写とリアルな日常生活の描写が話題となりました。

ストーリー

本作は主人公の隆一が、離婚して母親と二人暮らしを始めたことから始まります。職場でも孤独を感じる中、母親の年老いた姿に心を痛める隆一。そして、母親に同居するようになった姉妹・英子と美和。家庭内の葛藤、個人的な苦悩が交錯していく展開は、誰もが遭遇するであろう人間関係を心に刺し、涙なくしては見られない情感あふれる物語です。

感想

本作は、吉田修一さんの代表作であり、確かに得てして、家族や人間関係の複雑さ、喜怒哀楽が丁寧に描かれていました。また、登場人物たちの思いや行動の背景にある心理的な苦悩も、非常に生々しく描かれていました。物語の後半部分で母親の役どころが増え、物語が緊迫感を増す中、登場人物の成長が感じられました。

ただし、物語のテーマや構成はかなり緩やかな印象があるため、途中で興味を失う可能性も。それでも、随所に描かれる細かな心理描写や表現のセンスは本当に素晴らしいと感じ、この作品に静かに感動しました。