あらすじ
松本清張による小説『風の歌を聴け』は、村上龍によって映画化された作品である。舞台となるのは、東京の下町。主人公の梶原は、廃業した印刷会社の社員で、自暴自棄の日々を過ごしていた。そんな彼に目をつけたのが、暴力団の幹部・稲垣だ。稲垣は梶原に、路上生活を送る女性・美幸の世話をするように命じる。美幸と出会った梶原は、次第にその人間性に惹かれ、稲垣との関係に疑問を抱き始める。
感想
『風の歌を聴け』は、映画監督の村上龍が描く、悪と美の物語である。主人公の梶原を演じるのは、草刈正雄。彼は、自滅が目に見えるまでに荒んだ男を、見事に演じ切っている。また、彼が出会う美幸を演じるのは、薬師丸ひろ子。彼女は、華奢で繊細な印象を与えるが、そこには強い意志が感じられる。そして、それを引き摺り回す稲垣を演じるのは、荒川稔久。無表情でありながら、存在感がある演技で、恐ろしさを感じさせる。
映像の表現も秀逸で、戦後の下町を再現した狭苦しい世界観が、物語の重みを引き立てている。また、風景によって物語がゆったりと進むのも良い。しかし、暴力団のアクションシーンは、血みどろになりすぎてしまって、印象が強すぎると感じた。
総じて、『風の歌を聴け』は、濃密な人間ドラマとして、草刈正雄、薬師丸ひろ子、荒川稔久という豪華なキャストが、引き締まった演技を披露している。映画好きな方は、ぜひ一度鑑賞してみることをおすすめしたい。
参考文献:村上龍(監督)『風の歌を聴け』
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