あらすじ
主人公のピアニスト、杉山音一は、幼い頃から音楽に親しんできたが、演奏家になる夢を捨て、鋼を製造する工場で働くことに。そんな彼の日常に、新人の工場労働者である若き天才ヴィオラ奏者、岡部まどかが現れる。音一は彼女の演奏に感銘を受け、再び音楽への情熱を取り戻していく。
感想
本作は、音楽と工場が交錯する環境を舞台に、人生の選択や葛藤を描いた作品である。作者の鈴木先生は、自身が製鉄所勤務だった経験を生かし、丁寧な描写で工場の現場を描いている。また、主人公の音一らが抱える悩みや葛藤が、自然な流れで物語に絡んでいくことも魅力的だ。
特に、音楽の描写は詳細でありながら、深い哲学的な部分にも言及しており、読者にとっても新しい発見があるかもしれない。また、工場の現場描写も生々しく描かれており、工場勤務の方にもリアルな描写だと感じるだろう。
ただし、物語が少し長く感じる部分もある。また、劇中の音楽が出来がよくなったために、工場の描写が疎かになる場面もある。しかしそれでも、作者がヴィオラ奏者であることから生まれる音楽愛が感じられる作品となっている。
全体的に、ストーリーの深みと音楽的な表現が見事に融合した傑作と言える。音楽や工場に興味のある方にとって、必見の一冊となっている。
※「羊と鋼の森」 著者:鈴木光司
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