はじめに
「東京奇譚集」は、山本文緒の短編小説集です。東京を舞台に、さまざまな人物たちが織りなす奇妙な物語が描かれています。
ストーリー
本書に収録された短編は全8篇で、以下のようになっています。
・「化け猫の飼い方」
男性が飼っている化け猫が、突然人語を喋るようになります。男性はどうすればいいのか悩む中、化け猫が語った過去の話を聞くことになります。
・「蚊帳の外の獏」
母親の再婚相手の家に居候している少女が、夜な夜な蚊帳の外で聞こえる不気味な声に悩まされます。しかし、その声の正体を知った瞬間、彼女の世界は激変します。
・「猫舌の美女」
ある日突然、猫になってしまった女性が主人公の物語。彼女は、元の人間に戻るために占い師の助けを借ります。
・「会計士のラブレター」
会計士の男性が、職場の女性へ手紙を送ることに。しかし、彼が書いたラブレターは、本当に彼が書いたものなのでしょうか?
・「嫉妬される男」
夫は仕事一筋で、家庭は全く相手にしてくれない。そんな夫に嫉妬を抱く妻は、ある日行動に出ます。
・「メロドラマ」
ショーウィンドウの中で、人形のように動く女性たち。彼女たちが抱える秘密とは?
・「裏窓の女」
高級マンションの一室で、ある女性の姿が見えます。彼女はなぜ裏窓で見つめているのでしょうか?
・「東京奇譚集」
本書のタイトル作品。小さな町工場で働く男性を中心に、東京に伝わる奇妙な噂が描かれます。
感想
山本文緒の得意とする、キャラクターたちの奇妙な心理描写が魅力的な短編集です。各物語の世界観も独特で、どの作品も一風変わった雰囲気があります。
特に「化け猫の飼い方」や「蚊帳の外の獏」は、不気味さが際立つストーリーで、読者を引き込んでくれます。
一方で、長編小説と異なり、短い分ストーリー展開が急速で、解決があっさりしてしまう場合もありました。
しかし、山本文緒が描く現代の「東京」は、どこか異世界のようで、非日常的な体験をしたい方にはおすすめの作品です。
まとめ
「東京奇譚集」は、山本文緒の独特な世界観とキャラクター造形が光る、不気味で奇妙な短編集です。多彩なストーリー展開があり、1つの物語を読み終えるたびに、異世界に足を踏み入れたような気分になります。是非一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
【参考書籍】
- 山本文緒『東京奇譚集』、新潮社、2016年
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