概要
『バカの壁』は、文化人類学者の高田靖雄氏が「国際シンポジウム『愚か者になること』」において発表した講演をまとめた書籍である。その名の通り、「バカさ」について考察し、様々な角度から「バカ」という存在や概念を捉え直す試みがなされている。
内容
高田氏は、時代や文化によって「バカ」とされたり、認定される条件が異なることを指摘する。さらに、「バカ」や「馬鹿者」として社会的に軽んじられている人たちの中に、実は社会を動かす力や素晴らしい能力を持っている人たちが存在する可能性があると主張する。また、「バカ」という概念は、人々が自身が持つ弱さや欠陥を投影したものであり、その投影がされた先にある人々を軽んじたり差別したりすることがあることも考察されている。
評価
本書は、様々な文化や分野からの「バカというものの見方、捉え方」を挙げるなど、興味深いテーマについて軽妙な語り口でまとめられている。特に、高田氏が「バカさ」を取り巻く問題に対して穏やかな視点を持っているのが印象的だ。しかしながら、高田氏が示す答えや解決策は極端に簡単なものではなく、読者自身にとって未解決のまま残る可能性があることも言及されている。
まとめ
『バカの壁』は、社会的弱者や「バカ」と名指される人たちに目を向け、様々な観点から考察された本格的なエッセイである。高田氏が独自の視点で「バカ」というものを考えることによって、読者自身が「バカさ」という概念についてもう一度考え、自分自身をより深く理解することに繋がる可能性がある書籍である。
コメントを残す