書籍名『パガニーニの舌』のレビュー

本書の概要

『パガニーニの舌』は、日本の作家・宮部みゆきによる小説である。舞台は、イタリアのパルマ地方にある壮大なヴィオラ製造会社であるグルッポ・カニッリ社と、同社の工場で起こる謎の一家殺人事件が描かれている。

主人公の巽宏明は、カニッリ社からの依頼で、少女時代からの音楽仲間のイタリア人女性・フィアモッタの元を訪れ、カニッリ社のためにパルマ地方の楽器職人たちを訪ね歩くことになる。そして、フィアモッタの美しく繊細なヴァイオリン演奏に触発されながら、事件解決に向けて奔走することに。

本書の感想

『パガニーニの舌』は、宮部みゆきの作品としては異色の作品であるが、それが新鮮であり魅力的でもある。宮部作品といえば、事件解決が主軸となる地味ながら硬派な作風が特徴的だが、本作では音楽という美しく繊細な要素を取り入れることで、一層作品に深みを持たせている。

主人公の巽宏明やフィアモッタをはじめとするキャラクターたちの魅力も充分であり、読者は彼らの生き生きとした人間味に共感しながら物語を進めることができる。また、イタリアのパルマ地方の美しい自然やヴィオラに関する詳細な描写は、読者を物語の世界に一層引き込んでくれる。

一点だけ残念だったのは、事件解決の糸口がやや薄かったという点である。物語の中盤で繰り広げられる一連の病死事件に関して、事件解決につながるヒントとなる情報がいくつか示唆されるものの、それが最後まで活かされなかったため、ややありきたりな結末に感じられてしまった。ただ、それでも全体としては、音楽という美しいテーマやキャラクターたちの魅力にあふれた、素晴らしい作品であると感じた。

まとめ

『パガニーニの舌』は、宮部みゆきの作品とは異なる新しい一面を見せた色彩豊かな小説である。美しい音楽と、キャラクターたちの魅力に加え、イタリアのパルマ地方の自然や文化を描写するなど、読者を作品の世界に引き込む要素が多く盛り込まれている。一方で、事件解決の糸口がやや薄かったという点は残念だが、全体としてはオススメの作品であると言える。


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