あらすじ
主人公である30代の郵便配達員が末期の脳腫瘍を宣告され、余命僅かと告げられる。ある日、そんな彼は突然、海辺の空き地に現れた『猫使い』と名乗る男に出会う。猫使いから奇妙な取引を持ちかけられ、彼と猫が交換される。仕事との両立が難しくなるほど猫との生活を楽しみ、彼は残りの時間を精一杯生きることを決意する。
感想
この小説は、一言で言うと深く感動する物語でした。登場人物の内面描写が繊細で、読むことで彼らの感情に共感することができます。特に主人公の葛藤や絶望感は、彼自身も理解できないような、心の底から湧き上がってきそうになってしまいます。
また、猫という存在がストーリーの核を担っているのですが、それが本当に巧みに表現されています。人と動物、命と倫理、日常と非日常など、この小説を通して多くの問いかけが浮かび上がります。
曲がりくねった展開もまた魅力で、身につまされる場面ばかり。ストーリーは最後まで読んでみないと分からないことがふんだんに盛り込まれており、そのために読み終わった時の余韻は強烈です。
個人的な評価として、この小説は圧倒的に素晴らしい仕上がりだと思います。このように様々な題材を孕んだ物語を、これほど優れた文体で表現するのは、私にはまだまだ難しいことだと思いました。この小説を手に取った人には、心に多くのものを残すことは間違いないでしょう。
評価
10点満点中、9点。
多種多様なテーマを織り込んだストーリー展開は見事であり、心に強い印象を残す。
唯一気になる点は訳者の翻訳技術にやや難があることだが、ストーリー自体の素晴らしさはそれを補って余りある。
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