『私たちはどうかしている』

概要

『私たちはどうかしている』は、作家の米澤穂信による小説である。主人公の高杉理紗は、売れない作家を夢見る女性だが、不倫相手の男性が殺害される現場を目撃してしまう。事件を隠蔽するために様々な人々が動き出し、次第に理紗自身も事件に巻き込まれていく。

１６年前、高杉理紗は作家を目指し、脱サラして上京した。しかし、今では48歳を迎え、作家としての野心は失われつつあった。そんな中、不倫相手の男性が殺害される現場に遭遇してしまう。その後、真犯人を隠蔽するために様々な人々が事実を歪曲し、理紗自身も容疑者として疑われるようになる。

事件に巻き込まれる中、理紗は自らの人生に向き合わざるを得なくなり、自己嫌悪に陥るが、同時に自身の生き方を見つめ直し、次第に自分自身を受け入れていく。

米澤穂信の描く登場人物たちは、どれも生々しく、ありふれた日常を送っているように感じられる。しかし、事件によりそれまでの生活が崩壊し、多くの葛藤を抱えるようになる。

特に、自己嫌悪に陥りながらも自分自身を受け入れていく理紗の変化は印象的だった。事件を通じて自分自身を振り返り、新たな自分を見つけ出すプロセスが、非常にリアルに描かれている。

また、物語の展開や筆致にも非常に優れている。思わず読み進めてしまうような展開が続く一方、登場人物たちの内面や情緒にも丁寧に描かれている。

総じて、『私たちはどうかしている』は、深い人間ドラマが描かれた名作である。米澤穂信の才能が存分に発揮された作品と言えるだろう。