作品概要
ディミトリ・グルジェフスキーによる、ロシアのSF小説。荒涼としたポストアポカリプスの中で、地下鉄の中の人々のサバイバルを描く冒険小説。
ストーリー
物語は2033年、原爆戦争で地上を荒廃させた世界。人々は地下鉄の中で暮らしており、各駅が独自の国となっている。主人公アルテムは、自身の故郷が危機に瀕したことから、遥か危険な地下鉄を横断して助けを求める冒険に出る。
レビュー
メトロ2033は、陰鬱なSF小説の代表作品の1つとして高く評価されている。人間の業が引き起こした世界の遺児たちの苦悩を綴った、暗くて深い物語である。
作者が描く荒涼とした世界では、放射能や異形のモンスターに襲われたり、自らの信念や考え方を改めたりする過酷な試練が待ち受ける。主人公アルテムもそれを強く感じる人物である。
また、各駅で繰り広げられる様々な人々の生活の様子も軽く触れられており、世界観の深みが増している。また、彼らの駅ごとの歴史や文化は同時に人種や言語、宗教といった問題にも触れ、一つひとつのエピソードに思いを馳せることができる。
本作品は、2009年にはゲーム化もされたが、そのストーリー展開は原作にも劣らず、むしろ益々感情が揺さぶられる。凝った作りるのに加え、キャラクター達のエモーション描写と背景との対比が印象的。私としては、前半の描写が特に気に入った。リアルな描写でアルテムの体感が引き立ち、荒廃した世界への恐怖感が強く伝わった。
メトロ2033は厳しい世界を生き抜く人々の姿を描いた、充実の物語である。SF好きにはもちろん、冒険小説やサバイバルものが好きな人にもおすすめしたい。
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