概要
『蟹工船』は、小林多喜二が1933年に発表した小説である。物語は、大正時代の日本で生活が苦しく、やむなくブラジルに渡ることを決めた漁師たちが、飛騨地方から九州までの海域で働くことになり、陸地との交わりを断ち、疲弊しきった漁船で人間としての尊厳を奪われ、人権を踏みにじられる様を描いている。
ストーリー
物語の主人公は、漁師の田口清吉である。彼は、妻と子どもたちがいても、生活が苦しかったため、ブラジルに渡る決心をした。漁師たちは、船主の下に集まり、蟹の水揚げをする「蟹工船」で働くことになった。
しかし、その実態は、人身売買であった。漁師たちは、地獄のような環境で働かされ、米や銭が支払われなかった。一方で、蟹を採取するために、不良品や残さず売れるとは限らない満載した蟹工船は、いつも振り子のように揺れていた。
そして、船上での暮らしは、極限状態に拷問にも似た 不当な過酷な処遇 であり、漁師たちは、肉体・精神的に激しい苦痛に晒されていた。清吉たち漁師は、自らたちで蜂起を起こし、九州に帰ることが出来たが、多くの同僚たちは死亡し、虐待に耐え切れなかった者たちは、船から海に放り出された。
気持ちに残る場面
本作品の中で、印象に残る場面は、多くあるが、そのひとつが、漁師たちが船上で起こした暴動である。船内の乗務員たちは、鉄棒や棍棒を使って、反抗する漁師たちを鎮圧しようとしたが、孤独で苦しさに耐えられなくなった漁師たちは、自らの命を投げ打ちながら攻撃を仕掛け、キャンブリングか何かのように悪酔いした船員たちは無様に倒れていった。
まとめ
『蟹工船』は、広く評価されている名作の一つである。小林多喜二の筆により、漁師たちの苦労や受けた不当な仕打ち、そして、人権侵害などの社会問題を描き、読者に強い印象を与えた。また、小林多喜二自身も、この小説が原因で亡くなってしまったことからも、本作品が彼にとっていかに重要な作品であったかがうかがえる。
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