「博士の愛した数式」レビュー

物語の概要

本書は、数学者として成功を収めたが、心に傷を抱えた主人公の物語である。彼は、退職後に住む海辺の町で、隣人の少女とともに数式を用いて心を癒していく。彼が作り出す数式には、彼の人生や隣人の少女たちが込められている。

まず、本書は数学を身近なものに感じさせる物語である。物語中で登場する数式は、あくまで物語の中でのみ有効なものであり、読者は数学的知識を持っていなくても、物語の中で十分に関わりを持てる。

また、心に傷を抱えた主人公の心理描写が素晴らしい。彼が過去にどのような経験をしたのか、それが彼にどのような影響を与えたのかが描かれ、読者の心を揺さぶる。また、隣人の少女たちも、それぞれの事情を抱えており、主人公が作り上げた数式が、それぞれの少女たちを救う手助けとなっていく。

ただし、物語が進むにつれて、数式を用いたストーリーが少し淡白になってしまう部分がある。物語は、数式が主題であるにも関わらず、最後に数式としての活用があるわけではなく、数式自体があまり意味を持っていないように感じられる点が残念である。

「博士の愛した数式」は、数学をテーマにした物語であるが、数学的知識がなくても十分に楽しめる。主人公の心理描写が素晴らしく、隣人の少女たちにも十分に魅力がある。ただし、物語が進むにつれて、数式を用いたストーリーが淡白になってしまう点が残念である。全体的には、読んで損はない作品である。

参考文献：「博士の愛した数式」、芥川龍之介、新潮社、2003年発行。