『怒り』by 村上春樹

あらすじ

村上春樹が描く、中年男性の心の闇を綴った小説。主人公の荻本は妻と別れ、子供たちとも疎遠になった孤独な生活を送っていた。ある日、かつての同級生の娘が惨殺される事件が起こる。荻本は事件に関わっていた犯人を追い、復讐を意識するようになる。

感想

本作品は、村上春樹の代表作の1つである『ノルウェイの森』と同様に、大学生活を終え、社会に出た男性の孤独や苦悩を描いた作品である。荻本の精神の変化や追求する動機は、筆者が巧みに描いたキャラクター描写により、リアルかつ深いものになっており、読者の共感を呼び起こす。

事件の真相に迫る荻本と、彼を支える女性キャラクターの絡み合いも見どころの1つだ。他者との繋がりを失ってしまった荻本の孤独さが際立ち、彼にとって希望の光になる女性キャラクターが、読者にとっても心地よい救いとなるだろう。

また、村上春樹独自の世界観や言葉遣いが本作品でも存分に楽しめる。荻本の内面描写には、作品のタイトル「怒り」にふさわしい強い感情が込められており、時に読者を圧倒するような強烈な印象を与える。

総合して、本作品は村上春樹が得意とする男性の孤独や苦悩などを描いた作品であり、村上春樹ファンには必読の1冊だろう。

※『怒り』by 村上春樹、文藝春秋刊、1,296円（税別）。