概要
『明るい死に方』は、闘病中の末期がん患者である三上延さんが、自らの経験をもとに綴ったエッセイです。三上さんは、自分自身が余命宣告を受けたとき、どのように向き合い、生きる意味を見いだしていったのかを、率直にかつユーモアを交えて綴っています。
詳細
三上さんは、普段は小説家として活躍しており、本書でもその才能が光っています。エッセイながら、多彩な文学的手法を駆使して、臨死体験や病気との向き合い方について、深い洞察をしていきます。
例えば、三上さんは「独り言」に注目し、自分の独り言と他人の独り言との違いについて考えます。「普通の人の独り言は、大切な相手(たとえば、愛する人)がいないことを訴える感傷的なものだ」と述べつつ、「僕の場合は、誰も聞いてくれなくたって、偉そうにベラベラ言ってるんだ」と、自分自身の独り言についても随所で触れます。
また、三上さんががんと向き合ったきっかけは、自分自身が本を書くためだったとも明かします。がんによって時間に余裕ができ、書きたかった本を実現できたとしても、「それがあって本当にいいのか」と疑問を持ったとのこと。苦しみと向き合い、それでも「生きる意味」を見つけ出すことで、生きる力を得たといえるでしょう。
感想
三上さんの強さ、人間力、知性、そして立場に立って観察するフレームワークに感動しました。死に向き合ってもユーモアを忘れず、「まあ、この書き手はこういう人なんだな」と納得し、共感する部分が多くありました。がんと闘わなければならない方々、そしてそうでない方々にもお勧めの一冊です。
参考文献:三上延(2019)『明るい死に方』、KADOKAWA
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