ストーリー
本書は、作家の吉田修一氏が自らの父親と向き合いながら書き上げたエッセイ的な小説である。主人公の吉田修一は、小説家を目指す若者だったが、病気の父親が倒れ、彼女が実家に帰郷するなど不運が重なり、家業の建築会社を継ぐことになる。そんな中、彼は母親である早苗と再会し、2人の時間が重なったことで、彼女と父親、自身との関係性を深めていく。
感想
本書は、父親との関係性を描いた作品であるが、実際には母親との絆が中心的に描かれている。母親である早苗は、自己犠牲的な愛を持ち、彼女の存在が主人公の内面を浮き彫りにする。また、母親を通じて語られる戦後の日本や、小さな建築会社が抱える問題を描くことで、時代の中で人生を生きることの重要さを訴える。
筆者の吉田修一が小説家であることから、本書の文章は文学的なタッチである。そのため、時には深遠な思索や、詩的な表現がされる。しかし、話がテーマに沿わない場面が散見されるため、物語としての展開には疑問が残る面もある。
まとめ
本書は、日本の戦後復興期を背景に、家族の関係性や、社会問題を描いた作品である。吉田修一氏が筆者であるため、文章は美しいタッチで執筆されている。惜しむらくは、話のテーマとのバランスに一部不足があると感じられた。それでも、家族愛や人生の在り方を考える上で、刺激的な作品であるといえるだろう。
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