『彼女がその名を知らない鳥たち』感想レビュー

あらすじ

主人公・古賀司は、ある日、同級生だった花田と再会する。そこで、彼女が自殺したという知らせを受ける。

心を病んでいた花田に「知らない鳥たちを観察する」という趣味を教え、心を開かせた古賀。しかし、その趣味を通じて、彼女の悲しい過去が明らかになっていく。

本書は、美味しいものを食べた後のように心に残る、切なく美しい物語だった。

古賀と花田の心のやり取りや、知らない鳥たちの観察など、細やかな描写が印象的だ。また、登場人物たちの過去や心情が徐々に明らかになっていく構成は、物語の骨格をしっかりとしている。

登場する鳥たちには、それぞれ象徴的な意味が込められている。私は特に、「ラーク・バンテッド」のエピソードが印象に残った。鳴き声を聞いたら、もう戻れないという歌詞と共に、花田の過去を知るシーンは、胸に迫るものがあった。

古賀が花田に「知らない鳥たち」を紹介し、その過程で二人が心を通わせる物語。切なくて美しいストーリーを、丁寧な描写と象徴的な鳥たちの登場で構成している。