「雪国」のレビュー

作品概要

「雪国」は、川端康成による小説である。初出は、1947年に雑誌「新潮」に掲載された。物語は、東京に住む古屋新之助と、新潟県にある小さな温泉宿・桜の湯の若女将・鏡子との愛の物語である。第二次世界大戦直後の舞台が描かれ、戦争で傷ついた人々の心理描写が秀逸であると評価されている。一方で、雪の中で繰り広げられる官能的な描写があることでも有名である。

レビュー

「雪国」は、川端康成の代表作の一つであり、世界的にも有名な小説である。物語の舞台である雪の降り積もる温泉宿の描写は、独特の静寂と美しさがあり、心象風景として幻想的な響きを持っている。

また、戦争で傷ついた人々の心の内面を緻密に描写しており、当時の心理状況を知る上でも貴重である。古屋新之助は、戦争で傷つけられ、内面に傷を負っている。新之助は、鏡子に救われることで自らの傷を癒す過程を描き出しており、人間心理の深い部分を呼び覚ますものとなっている。

ただし、物語中に繰り広げられる官能的な描写には賛否両論がある。鏡子と新之助が交わす情熱的な愛の描写や、雪の中での肉体的な触れ合いの情景に対し、読者の中には深い感動を覚えた人もいる一方で、あまりにも過激な描写によって卑猥だと受け取る人もいるだろう。

総じて、「雪国」は、川端康成の美的感覚と繊細な心理描写に優れた小説と言えるだろう。

参考文献：川端康成『雪国』新潮社、2016年。