概要
本書は、明治時代に活躍した社会学者・柳田國男の著作集の1つである。本書では、民俗学と史学という分野から入り込んだ柳田が、社会人類学の観点から明治期の日本社会を分析し、その問題点を指摘している。
内容
本書は、明治期に世の中が大きく変化した背景にある問題点を指摘することから始まる。柳田は、特に明治維新以降の日本社会における個人主義の浸透に注目し、それが社会的な不協和音を引き起こしていることを指摘する。その上で柳田は、社会的コミュニティの再生の必要性を訴え、具体的にどのような要素が必要であるかを詳述する。
また、本書の特徴としては、柳田自身が収集した調査資料を引用し、具体的な例を挙げながら、理論を支えることが挙げられる。そして、その調査資料には、民間信仰や祭り、風習なども含まれており、社会人類学の立場から日本社会を考察する上で、大きな役割を果たしている。
感想
本書は、日本社会にとって極めて重要な時期において、社会人類学という視点からその問題点を見つめた貴重な書籍である。特に、現代社会において、個人主義の浸透が進む中、社会的な共同体の再生に関する柳田の指摘は、いまだに深刻な問題として残されている。また、調査資料を豊富に盛り込み、具体的な事例を挙げることで、理論を支えるという点も素晴らしい。社会学、民俗学、史学といった分野に興味を持つ人にとっては、ぜひ手に取って読んでほしい。
参考書籍:柳田國男「明治期社会人類学論考」(ちくま学芸文庫)
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