あらすじ
主人公は、小学校教師として働く尾崎静香。彼女は、ある日駅で美術館へ向かおうとしていた際、偶然にも美術評論家・蓮見孝之と知り合う。蓮見は、美術界で「幻の絵画」と言われる少女を描いた絵画「キスと恋の絵本」を熱心に探し続けており、静香もその話に興味を持ち、二人は一緒に捜索を始める。そして、彼らが捜索するうちに、静香は自分自身の心の闇や孤独、そして愛について考えることになるのであった。
感想
この小説は、もう一つの自分、もう一つの人生を描いた感動作だ。主人公の静香は、自分の本当にしたいことを見つけられず、自分に正直でいることができなかったが、蓮見との出会いをきっかけに彼女自身が本当に望んでいるものを見つけ、自分自身を取り戻していく。静香が見つめる絵画には、作者の人生も重なっていて、それが物語に心地よい深みを与えてくれる。回想シーンも含め、ストーリーが適切にブレイクされており、読みやすくなっている。また「愛」とは何か、というテーマも扱われており、多くの読者にとって、その意味を再度考えさせるものとなっているだろう。
評価
この本は、現代の小説の中でもハイクオリティ。ストーリーが絵画に通じるようにコンセプチャルに構成されていて、各章が見事に統合されている。キャラクターの成長、心理的発達は素晴らしい。言葉の選択も優雅であり、一瞬も退屈させることがない。彼女がその名を知らない鳥たちは、あらゆる愛、生き方、そして個人の価値について考えさせる、逸品だ。5つ星満点中、5つ星を与えたい作品である。
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